のどの症状・病気

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に10秒以上、呼吸が停止する状況を睡眠時無呼吸といいます。

完全に呼吸が止まるまでには至りませんが、呼吸が浅くなり酸素の取り込みが低下する状況を低呼吸といい、無呼吸と同じくらい体に悪い影響を与えます。

睡眠時無呼吸症候群は1時間の睡眠中に無呼吸と低呼吸の合計が5回以上(お子さんの場合は1回以上)生じる病気です。

症状

日中の眠気や倦怠感により仕事上のミスや学業不振、交通事故を来す危険がある、などがあります。他にも起床時の頭痛や夜間頻尿などの原因にもなります。また、高血圧や不整脈、脳血管障害、虚血性心疾患のリスクが高まることが報告されています。

お子さんの場合には、睡眠時無呼吸により深い睡眠が妨げられることで成長ホルモンの分泌が低下し、低身長などの体の発育に影響することが言われています。また、学習能力や記憶力・集中力の低下や、イライラしやすいなどの感情の起伏にも関わり、心身の発達・成長に影響が生じると指摘されています。

睡眠時無呼吸の原因:大人

睡眠時無呼吸には閉塞性と中枢性の2つのタイプがあります。

大部分が、睡眠中に呼吸の通り道である上気道が狭くなってしまうことによる閉塞性睡眠時無呼吸です。

上気道が狭くなる原因としては、首やノドの周囲についた脂肪だったり、扁桃が大きかったりすることもありますが、軟口蓋・口蓋垂(のどちんこ)・舌根(舌の付け根)を支える筋肉が緩むことが大きな原因となります。

脳から呼吸をするために胸郭・横隔膜を動かす指令が生じることで、私たちは特に意識をしなくても呼吸という運動を行っていますが、この呼吸指令が生じなくなることによる無呼吸が中枢性睡眠時無呼吸です。

原因は色々な病気が関与しますが、心臓の働きが低下している方に生じやすい無呼吸です。

睡眠時無呼吸の原因:こども

ほとんどが閉塞性の睡眠時無呼吸です。

上気道の狭小に最も影響を与えるのがアデノイド(鼻の穴の突き当たりにある扁桃組織)と口蓋扁桃の肥大によるものです。また、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによる鼻閉や肥満により生じることもあります。


検査

まずは鼻腔、咽頭の診察を行い、形態的に上気道を狭くするような病変がないことを確認します。

睡眠時無呼吸の有無、程度については実際の睡眠中に検査を行う必要があります。

御自宅で行える検査機器を用いてこれらを調べることが出来ます。指先と鼻先に専用の機器をつけて眠ってもらう検査で、お子さんでも利用可能です。

適切な治療方法を検討するために、入院して行う精密検査をお勧めする場合もあります。


治療・大人

一般的に閉塞性の睡眠時無呼吸では仰向けで寝ることで悪化するため、横向きでの姿勢を維持して眠る工夫をすることで症状が改善することがあります。

専用の枕やベルトなどが利用されています。また、肥満、禁煙、飲酒や睡眠薬の服用なども睡眠時無呼吸を悪化させる原因となりますので、可能であればこれらを取り除く努力も必要となります。また比較的軽症の場合には、下顎を前方に引き出すように顎の関節を固定できるようなマウスピースを用いることでも治療可能です。

重症の睡眠時無呼吸では上述した方法のみでは残念ながら治療が困難となることが多くみられます。そのような時に、一般的に用いられている方法がCPAP(シーパップ)という機械を用いた治療です。鼻に専用のマスクをあて、そこからノドの奥に圧力をかけた空気を送り込みます。狭くなってしまっている上気道を内側から押し広げることで無呼吸を抑えます。

痛みを伴う治療ではなく、治療の効果も十分に期待できる良い方法ではありますが、欠点もあります。根本的に無呼吸を治す方法ではないため、治療の継続が必要となること、健康保険を利用して治療するためには、ある程度の重症度が確認されないといけないこと、などです。

ただし、睡眠時無呼吸の患者さんは心臓や血管の病気になりやすいリスクが通常の方と比べて数倍高いことが報告されております。海外の報告ではありますがCPAPを用いることで、この危険を回避できると言われており、現状では最もお勧めできる治療法だと思います。


治療・こども

大人の睡眠時無呼吸が軟口蓋・口蓋垂・舌根などの部位で生じることと異なり、多くがアデノイドや口蓋扁桃の肥大によって生じます。

アレルギー性鼻炎などによる鼻閉も原因となり得ます。アデノイドや口蓋扁桃は3〜7歳の幼少時で最大となり、その後次第に退縮することが一般的です。ですので、症状が軽度であれば鼻閉の治療を行いながら自然に上気道が拡がることを待つ方針をとれます。

一方で、こどもの睡眠時無呼吸の好発年齢である3〜7歳の時期は心身の発達に大きく関係する時期でもあります。慎重な判断が必要となりますが、全身麻酔での手術治療をお勧めすることもあります。